宮城)流れ者の客引き急増 復興バブルの仙台・国分町
東北最大の歓楽街、仙台・国分町。風俗店や飲食店がひしめく通りで、通行人に声をかけ店に誘う「キャッチ(客引き)」が増えている。復興バブルに吸い寄せられるように県外からやってきては、路上で日銭を稼ぐフリーの男たち。警察は違法な客引き行為の取り締まりを強化しているが、減る気配はない。
もともとは風俗店などの従業員が路上に出て、客引きをすることが多かった。いまの主流は、特定の店に属さず店と口約束をするフリーで、客を1人連れて行くたびに千~2千円の「バック」を受け取る形だ。
■県外者8割、背景にリスク回避も
性風俗店やキャバクラの営業で、通行人を呼び止めて客として誘う「客引き」行為は、県迷惑防止条例で禁じられている。
仙台中央署によると、震災前の2010年には国分町で42人が現行犯逮捕され、うちフリーは半数以下の20人だった。それが13年には逮捕者は76人に増え、57人をフリーが占めた。うち県外出身者は8割。歓楽街対策課の古澤英幸課長は「フリーの多くが県外から来ている。震災後、特に増えた」と話す。
5月27日に逮捕された45歳の男は、北海道出身で、カプセルホテルに泊まりながら毎晩、路上でキャッチをしていた。翌日には、仙台の友人宅を拠点にしていた東京出身の34歳の男が捕まった。逮捕は3回目。
「今の国分町なら月数十万円は稼げる」。そんなうわさが各地の盛り場で流れている、という。
フリーが増えた背景には店側のリスク回避策という事情もある。07年に県迷惑防止条例が改正され、対象業種が性風俗店から、キャバクラなどにも広げられ、客引きの指示をする行為も取り締まれるようになった。摘発を恐れる店が従業員ではなく、フリーのキャッチを使い始めたという。
震災後、復興に携わる人を目当てにした店が増えると、キャッチも夜中まで路上をふさぐようになり、近くの店や通行人の苦情が急増。警察も客を装った私服警官を送り出し、違法行為の現場を取り押さえようと躍起だ。
■「罰金を払っておしまいだ」
だが、キャッチも簡単には捕まらない。
かつて歓楽街の客引きといえば、「黒服」姿が多かった。いまはジーパンにTシャツといった、一見「らしくない」見掛けで警察を惑わす。逃げやすいように、スニーカーを履いている。
通行人への声かけも工夫する。「店の種類や店名を出せばアウト(摘発)。でも『かわいい女の子いますよ』ならセーフ」と30代のキャッチの男性は悪びれずに語る。「私服警官の顔を写メで撮り、仲間うちでLINE(無料通信アプリ)で回している。捕まりっこないよ」と笑う。
20代の男性は「捕まっても、罰金を払っておしまいだ」と話す。
いたちごっこに、古澤課長は「いまの制度では、捕まえてもいっこうに減らない」と話す。
復興作業に携わり、仙台や被災3県に単身で滞在する人たちが、国分町にお金を落としていく。
半世紀近く続く日本料理店の2代目主人、小野和徳さん(47)はこう嘆く。「風俗店の客もキャッチもよそから来た流れ者。地元の常連客はつきまとわれるのが嫌で、国分町から足が遠のく人も多い」(辻隆徳)
「罰金を払っておしまい」おっしゃる通りです。
ぼったくりでなければ大歓迎でしょう。